美しい手しごと
私達はいろいろなことで感動する。 そのひとつに技の美しさがあります。
一流と言われる技は見て分る美しさに加えて、後からしみじみ見れば見るほどその良さ、深さを感じさせてくれます。
舞踊や音楽、スポーツのように技が流れていくもの。
絵画や花のように目の前でじっと観察できるもの。
はたまたバッグや日用品のように手にとって使えるものなど対象によって感じ方は様々に変わりますが・・・
東京のお客様から竹製の「小さな耳かき」をいただきました。
見るなり「江戸の職人さんのものですか?」と尋ねてしまいました。
竹と思えぬ飴色の、なめらかな逸品である。
「いや、いつも行く理髪店のおやじさんの趣味の品だ」という。
東北の廃屋から出る古竹を貰いうけ、それで作っているらしい。
趣味の域を超えた素晴らしい手業です。
使う人の心に添った曲線、地肌のなめらかさ。
江戸前の粋な熟女ってこんな感じかなーなんて思ってしまいました。
私欲を離れ他人の役に立つことが、人間の最後の美しさと言われますが、こんな小さなものからも伝わってくるものがある。 それは心を込めて何かをするということ。
理髪店のおやじさんのお客様への心の伝え方、技の伝え方、尊い心意気を感動のうちに教えられました。
仕事はこうありたいと、思わせられました。
麗子
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